Dear Stan

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 日本では過小評価を受けているのが残念だが、自分にとっては最高のテナーマンだ。あんなに美しいメロディーを即興で生み出す人は、彼以外にはいない。凡百の曲に勝ることを即興でやってのける。

 デビューした10代の頃から既に超絶技巧。しかし白人スターとして祭られるプレッシャー等からか、麻薬とアルコールは長い期間付きまとうことになる。それにしても演奏はまさに完璧で、止まらないメロディー、美しいサウンド、正確なテクニックにはお手上げ。
 実はフリープレイヤーにも好きという人が多く、即興で美しいメロディーを生み出していることが受けているのかもしれない。ジョージ・ガゾーン等コンテンポラリーなプレイヤーにも人気が高く、現在まで通じるものを作り出したのだろう。

 ゲッツとの出会いは、浪人中の夏のことである。暑いこの時期に何か良い音楽はないかと探していたとき、"Stan Getz with Guest Artist Laurindo Almeida"に出会った。まず音に感動し、更にそのアドリブの1コーラス目のメロディーフェイクにやられた。当時の愛聴盤は、これと"Blue Train"。しかしコルトレーンに強く傾倒しておりスピリチュアルなものを求めていた自分にとって、ジャズでのゲッツは綺麗すぎた。当時嫌いだったアルバムすらある。

 大学に入り、課題曲の「枯葉」の演奏を探して自分のCDを見ていたら、"Stan Getz Complete Roost Session Vol.2"にあった。その演奏を聴いて以来、ゲッツを好きになった。即興だと信じられない人は、すぐ後に別テイクがあるので聴くと良いだろう。追いかけている人にとっては心臓に悪い演奏だが、聴き入ってしまいそんなことは一瞬で忘れる。

 その後スタイルは常に変化し、それはゲッツ固有のものと言える。遺作となった"People Time"に於いても、円熟といった感じがない。むしろ天才即興家としての真髄を見せ付けられる。せめて一度生で聴きたかった。。

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